2022/02/02 13:43

興味を持ってご覧いただき誠にありがとうございます。
今日のブログでは、新作のご紹介と、製作の裏側をお話ししています。
ブログの更新は不定期ですが、いいなと思っていただけましたら、Instagram(@maco_bag)で情報を発信してますので、フォローしていただいたり、お友達に紹介していただけたら幸いです。
私の簡単なプロフィールです。興味のある方はご覧になって下さい。

2000年/(株)トゥモローランドに入社。
2007〜2009年/バッグクラフトマスタースクールにて、バッグのパターン、縫製の基礎を学ぶ。
2010年/トゥモローランドオリジナルバッグブランド「Maison&Voyage」の立ち上げに参画 デザインを担当
2015年/自身のブランド「Maco」を立ち上げる。
2018年/トゥモローランドの契約形態を変更し、ショップスタッフと個人事業主と2足のわらじを履く。
趣味であるテニスにおいて、欲しいと思えるバッグがなく開発を始める。



『New product』


<Racketpack>



アメリカの小学生の定番リュック があります。
それが「L.L.bean」 の「Bookpack」。キッズ用としてだけではなく、90年代にはストリートシーンでもよく見られました。当時友人が持っていたのをよく覚えています。


<L.L.bean Bookpack>

前ポケットについた反射テープが特徴的です。どことなく「いなたい」雰囲気のコレがずっと気になっていて、「今、あの感じ、良いなー、あれで大人が持てるラケットバッグを作れないかなー」と、グルグルと頭の中を巡っていました。「L.L.bean」と言えば、キャンバストートが有名ですが、この「Bookpack」も代表作の一つです。昔はレザーのトートなんかも作っていたりもしました。それが今、某ブランドでヒットしているデザインの元ネタになっていたりします。



<ビンテージのL.L.bean>

バッグにおいて「L.L.bean」というブランドは、ジーンズで言う「リーバイス」のような王様的存在で、私の大好きなブランドです。今回はオマージュの意味もこめて、「Bookpack」をMacoなりに落とし込んでみました。素材にはリモンタ社の「デービス」を使用し、大人が持ちやすい「Bookpack」、あらため「Racketpack」となりました。


<サイドには「O ring」>


<Jeans styleにも>

本来の雰囲気を残しながらも、素材、パーツをアップグレードし大人も持てるリュックになりました。
詳しいディテールは、あらためてオンラインショップに記載致しますのでお楽しみに。



『製作過程』

さて、ここまで読んで頂いて、何だかサラッと出来上がったように思われるかもしれませんが、決してそうではありません。どの業界でもそうかと思いますが、ものづくりに「産みの苦しみ」は常に存在します。
「自分との戦い」というとカッコ良すぎますが、今回の製作過程は自分が持っている先入観をひとつひとつ壊していく作業でした。一度商品になってしまうと、そんな事は分からなくなってしまうのですが、そのプロセスにおいては、霧の中をさ迷うような感じで、「ダメだー」と絶望したり、「一筋の光が見えた!」と思ったら、「また絶望…」。のような裏側があります。

一般的に、バッグを作る一連の流れとしては、デザイン画を描く、図面を引く、型紙をとる、生地の裁断、縫製という流れかと思いますが、私はデザイン画と図面を書きません。人に依頼されて作る時にはプレゼン用に用意したりすることもありますが、自分で作る訳ですから、頭に入っていれば良いので、いきなり型紙から入ります。既存の「Racketruck M」の背中部分を活かし、前胴部分は新しく型紙を起こしました。パターンはパターンで、寸法が合わずに何度やり直しました。

〈背中部分はこちらのMサイズと同じ仕様〉

まず、1stサンプルは、ダミー(=仮)の生地で仮縫いをします。1回で完成する事は絶対にありえないので、やり直すのが前提です。なのでなるべくコストのかからない生地を使って、多少雑でも良いのでスピーディに作ります。

最初に形になる1stサンプルはかなり重要です。仕上がりを確認して、「修正すれば良くなる」のか「これはもう見込みがない」とするのかをジャッジしなければなりません。修正して良くなれば良いのですが、失敗が続いて「沼」にハマると、時間と材料をロスしてしまいますし、逆に、本当は素晴らしい商品になる可能性があるものを、その時点で潰してしまうということもあります。

今回に関しては、かなり微妙なラインでした。
シルエットは及第点ですが、ダミーの素材と反射テープの組み合わせが全く良くないせいで「これでは、大人は持たないし、自分も持たない。」違う方向を考えるべきだと判断してしまいました。反射テープをやめて、大きくデザインを変更する事にしたのです。
2nd 3rdサンプルと作ってみたものの、「一体何が言いたいのか」分からない物が出来上がりました。コンセプトは大きく変わったにもかかわらず、変更したのはディテールだけだったためです。

やはり、スタートに立ち返って、コンセプトを強く意識しないと…。流行のディテールだけくっつけても、何でそのデザインなのか、筋が通らないんですよね。筋が通らない物は誰にも伝わらない。

乗り越えるべきはやはりこの「反射テープ」。

<3M製反射テープ>

これと向き合わないと前に進めません。そもそも、このテープ自体にオシャレなイメージがありません。もともとファッション用に作られたものではないので、しょうがないですよね。やはり、一歩間違うと「安全用」といった雰囲気を醸し出すのです…。

〈工事現場用のベスト〉

本体の生地を変えれば改善されるのか…。最近使用していなかった「リモンタデービス」はどうかと、ふと思いました。しかし、過去にもリモンタデービスでリュック のサンプリングに失敗していたため若干のトラウマもありました。また、デービスは生地値も高いですから、上代としてはMaco史上最も高額なものになるでしょう。値段とのバランスも考えなければなりません。この時点では目に見えていませんので想像の範囲を超えません。

また、生地はお国柄が出ます。「Prada」や「Felisi」で使われているイメージがもあり、高級感はあるものの、どうしても色気のあるイタリアンな雰囲気に向かいがちです。今回やろうとしている「L.L.bean」 というアメリカンなテイストとのマッチングが未知数でした。 


〈Prada〉

〈Felisi〉

「頭で考えていても仕方ないので、手を動かしてやってみよう。」
いつも色々と考えるのですが、最終的に毎回これです(笑)。それが一番早い。
しかし、闇雲にやってもらちがあかないので、次はこれで行こうと思いました。
「「L.L.bean」の開発者になりきる」という事。ちょっと何を言ってるのか分からない(笑)かもしれませんが、
そうしないと壁は乗り越えられないと思ったのです。

本家「L.L.bean」はシルバーのステッチで全箇所縫製されています。反射テープ、ファスナー、ウェビングテープ、など付属パーツを全てシルバーで共通させているので、それに色を合わせているのだと思います。
ミシンを扱ったことがある方は分かるかと思いますが、ステッチの色が全て同じというのは、糸を変えなくて良いのでものすごく効率的です。さすが合理主義の国アメリカのプロダクト。量産のことも配慮してこのようなデザインなのかもしれないと、想像を巡らせました。

それにならい、全てグレーのステッチで縫製。つまり、黒やネイビーの生地に対して配色のステッチになるのですが、私はこれが苦手でした。配色にする事でカジュアルで、少し安っぽいイメージになりがちなのです。自分の心をグッと抑えてとにかく縫う。
ただ、本家よりも少しだけシックにしたかったので、グレーのトーンはシルバーよりダークにしました。 ファスナーはビスロンファスナー を使用。「L.L.bean」はコイルファスナーですが、ここも大人仕様にアップグレードしました。
<グレーのステッチとビスロンファスナー>

ここでまた、問題発生。
重要なパーツであるウェビングテープの仕入れ先が商品数をかなり絞ってしまい、使おうと思っていたテープが廃盤になってしまったのです。コロナの影響による経営難のためだと思われます。じゃあ、他を探そうと言っても、バッグの業界は体質が古く、ホームページすら持っていない会社がザラです。なのでネットで探しても簡単には出て来ません。

何とか人のツテをたどって、結果的には新しい仕入れ先にたどり着くことが出来ました。最初に考えていた素材からは変わりましたが、こちらの方がコストも安く、今後も利用したいと思える仕入れ先でした。困難にぶつかる事が新しい発見を呼んできてくれる事があります。

問題は続きます。生地の値上げです。世界的な情勢ですね。約10%は上がりました。生地だけではなくファスナーなど全般的に上がっています。上がった分をそのまま転嫁できれば良いのですが、知名度のない小さいブランドにとってはなかなか頭の痛いところです。

ネガティブな事が続くと、マインド的にもダメージが来ます。「そもそも、これから3Dプリンターで、なんでも作れる時代が来るのに、ミシンでバッグを作るなんて時代錯誤じゃないのか。」なんてことを考えたり(すでに3Dプリンターで作った「家」が存在しています)してしまいます。

もやもやとした気持ちを抱えながらも、何とか製作は続けます。本番の生地(デービス)、本番のファスナー、本番のウェビングテープで何とかカタチにしてみます。縫製の途中段階でも、何となく雰囲気はわかってきます。「なんか、良いかもしれない…。」
そうなって来ると、もう楽しみで仕方ない。早く形にしたい!ちょっと前までのネガティブマインドは何処へやら、です。

結果は、イメージ通り。デービスの色気と、アメリカンプロダクトの質実剛健な感じがそれぞれを打ち消しあってくれて、丁度良い塩梅の所に落ちました。こんなラケットバッグは見た事がないでしょう。

やっぱり好きなんですよね、ものづくりが。作る手法は何でも良いのですが、ミシンは大好きです。商品が完成した瞬間と、お客様に喜んでいただけた瞬間の喜びは何ものにも変えがたい。それまでの工程がハードであればあるほど、です。
<このミシンで縫っています>

以前、ネットの記事で「ひろゆき」さんが、若い人に向けてこんなことを言っていました。
「35歳までに適職を見つけておこう。休みの日でもついその事を考えてしまうような、夢中になれるような事を。それは斜陽産業でも良いし、伸び盛りの産業でも良い。伸び盛りの方がチャンスのように見えるが、競争も激しかったもする。逆に斜陽産業の場合の方が、やり方次第ですぐにトップクラスになれる可能性もある」

なるほど。良い事を言います。
今、伸び盛りの産業と言えば、いわゆる「TECH系」と言われる産業でしょうか。先述したように、バッグの業界は古い業界ですし、斜陽産業と言っても過言ではないと思います。だからこそチャンスがあると言うのは勇気をもらえる記事でした。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。こんな感じで日々試行錯誤しております。こちらのモデルに関しては、2月中旬頃にはオンラインショップにUPしたいと思います。2022年はさらにアイテムの幅を広げていきたいと考えております。引き続き、よろしくお願い致します。

Maco 眞塩