2021/09/01 08:54

最近は、ありがたいことにSHOPや、企業からの依頼も増えてきて、仕事の幅が広がりつつあります。

これはその一つで、約6ヶ月前にスタートしたプロジェクト。


きっかけは、もうかれこれ3年前になります。Facebookで知った「業務用ミシン講習会」というマニアックな会に私が参加した時の事。一緒に参加していた革小物作家の「昨日カメラ」さんとの出会いでした。

昨日カメラさんはカメラ用のケースやストラップなどのグッズのクリエイター(現在は休止中)で、高いクオリティと量産品にはないデザインで、大人気の作家さん。講習会の後は、たまにInstagramでのやりとりをしていましたが、ある日、こんなメッセージが。

「お仕事の相談があります。あるカメラ屋さんがカメラバッグを作りたいそう。」

嬉しかったですねー。声をかけて頂いたこと。

カメラ屋さんとは、日暮里にある古いフィルムカメラの専門店「三葉堂寫眞機店」(みつばどうしゃしんきてん)さんでした。

三葉堂寫眞機店さんは、主にアンティークのフィルムカメラを専門に扱っております。私は存じあげませんでしたが、フィルムカメラファンの間では、とても人気のお店。スタッフの方々も皆若くて、勢いのあるお店だなと思いました。そして何よりもフィルムカメラカメラへの愛が…すごい。語り出したら、止まらない…(笑)。

〈字体が洒落ています〉
〈手書きの看板〉

という訳で、「カメラバッグ」を作る事になったのです。


常々、「良いカメラバッグが無い」と思ってたとの事でご相談頂きました。
私の持論ですが、テニス用のバッグ同様、「ニッチなバッグに良いデザイン無い」説は確実に存在します。

デザインから製作まで、人様の商品を請け負うのは初めての試みでしたが、そんな人気のお店から声をかけていただくとは光栄な事で、がぜんスイッチが入りました!

さて、私、テニス用バッグは作っていますが、カメラ用バッグを作った事はありません。

ポイントになるのはやはり、衝撃からカメラを守るための「クッション性」。そして大事なカメラを雨から守る「撥水性」。そして、私に依頼するということは、そういった機能性以外にも「ファッション性」を求められているわけです。
何かしらのカタチになるとは思っていましたが、それが納得できるレベルまで高められるだろうか。そして、どれくらいの時間がかかるだろうか。

まずはカメラバッグの基礎構造を理解しようと思い…、分からない時は、そう、これに限ります。「解体」です。
〈解体〉

一見、遠回りに見えますが、ここで、自分の頭の中の想像だけでスタートするのと、実際に物を見てスタートするのでは、完成時に雲泥の差がつきます。
イメージに近いデザインのカメラバッグをオークションサイトで落札し、ステッチをひとつひとつほどいてばらします。クッション材の厚み、硬さ、構造…。
作りを理解してから、デザインの方向性を考えました。

話を伺っていて感じたのは、アンティークカメラを扱っているだけあり、クラシックな物、古い物への愛とリスペクトです。 

永く使えて、あまりトレンドに左右されない物が良いと思いました。その上で、お店に並んだ時を想像し、そしてスタッフの方、そこに来るお客さんを思い浮かべて…。

〈こちらの常連の女性がモデルとなりました〉


〈三葉堂寫眞機店スタッフの松田さん〉

デザインのベースは、ブリティッシュなバッグブランドによく見られる、ハンティングバッグにしました。

「いかにも」なカメラバッグのデザインではなく、普段のスタイルにマッチする、良い意味でカメラバッグっぽくないカメラバッグが理想。それはオーナーのリクエストでもありました。

中の仕様や、カメラを入れる時に肝になる部分は、オーナーと昨日カメラさんを中心に、カメラ好きな人間が集まって、夜遅くまで話し合いました。


〈渋谷のお店にて打ち合わせ〉
左から、昨日カメラさん、オーナーの稲田さん、眞塩


昔のフィルムカメラって、重いんです。鉄のかたまりと言っても過言ではありません。カメラを入れた時にバッグが変形しないよう、底には硬めの芯を入れて縫い込みました。胴体にはクッション性のある芯材を入れ、カメラへの衝撃をやわらげるようにしました。

余談ですが、
古いカメラは、構造がシンプルで、メンテナンスをし続ければずっと使えるとの事。
昔の物って、何でもそうなんですよね。靴や洋服、私のミシンなんかでも同じ事が言えます。

フィルムカメラの事はあまり知りませんでしたが、触らせてもらうと、なるほど、その魅力が少し分かりました。
シャッターを切った時の「音」。巻き上げ式の物は、電源がなくバネの力だけでシャッターを切ります。そして、ずしりとした「重み」。所々メッキが禿げて、地の色がキラキラと光るボディのレトロな「たたずまい」。


〈ライカ製フィルムカメラ〉

最近のデジタル一眼のカタチって、流線型というか、モダンな雰囲気なんですけど、そうじゃない、鉄の箱とも言える、野暮ったくも、愛らしいフォルムがなんとも言えません。

〈かなり重いです〉

フィルムカメラは若い世代に人気だそうです。デジカメみたいに、撮ってすぐ確認できません。現像するまでどう撮れているかは分からない。それがタイムカプセルのような楽しみがあるとおっしゃっていました。
写り方も独特ですね。私世代にはどこか懐かしい…。

バッグの話に戻りますと、
素材はシェードや、船舶用資材として使われるアメリカの「サンブレラ」を使用しました。撥水性、耐光性に優れたアクリル素材です。

〈↑優れた撥水性〉


この素材、実はなかなかの高級品です。単価はあのリモンタ社の有名な生地「デービス」と同じくらいします。生地幅が狭いので、実質的にはデービスより高いです。

しかし、それには訳があります。
原着糸といって、糸の段階から色を付けているので、非常に発色が良い。化学繊維なのですが、触った感じはコットン素材のようにナチュラルです。
そしてなんと、生地の表裏が無い。普通、ナイロンやポリエステルは裏側にポリウレタンのコーティングをし、強度を保つのですが、サンブレラは裏コーティングがありません。

〈裁断後も反り上がっています〉

コーティング無しでこれだけのハリがあるのは、それだけ高密度に織られていると言う事。そして、ポリウレタンコーティングは経年劣化するのですが、それがないので、長く使えるのです。

実は、サンブレラは、私がトゥモローランド時代に採用した事がある素材でした。すごい良い素材だなと記憶にあったのです。
内側はカメラをソフトに包む、スウェード調の素材を用いました。



〈カブセを閉めやすいよう、手を入れられるようになっています〉

何度も試作→打ち合わせ、を繰り返しました。
最終的に、内側に使う芯材は部位によって4種類を使い分ける事にしました。ぱっと見はシンプルでありながら、内側の仕様はMaco史上最も凝った物となっております。

もちろん、フィルムカメラだけじゃなく、デジタル一眼も入ります。一眼レフと、単焦点レンズくらいを入れてぴったりなサイズにしております。

この生地を書いてる今は、量産に取り掛かったところです。

こちらはバッグの顔となるレザーのパーツですが、コバの部分は全て手で磨いております。まずはここからスタートしております。


心を込めてお作りしますので、発売までもうしばらくお待ち下さいませ。

なお、こちらの商品はMacoオンラインショップでは販売致しません。三葉堂寫眞機店さんのみの販売でございます。お求めの際は、三葉堂寫眞機店さんまでお問い合わせください。

〈Tent/camera bag〉
9月発売予定
¥22.000(税込)
三葉堂寫眞機店ホームページhttps://www.mitsubado.com/